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東京高等裁判所 平成12年(行ケ)177号 判決

原告

株式会社田丸屋

代表者代表取締役

原告

株式会社大澤屋

代表者代表取締役

原告

有限会社山本屋

代表者代表取締役

原告

有限会社本舗丹次亭

代表者代表取締役

原告

有限会社松島屋

代表者代表取締役

原告

有限会社水香苑

代表者代表取締役

原告

有限会社岩戸屋

代表者代表取締役

原告

有限会社谷屋

代表者代表取締役

原告

有限会社山源

代表者代表取締役

上記9名訴訟代理人弁護士

吉村駿一

被告

有限会社牧商事

代表者代表取締役

被告

有限会社上州水沢うどん

代表者代表取締役

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1原告らの求めた判決

特許庁が平成9年審判第18135号事件について平成12年4月6日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告らの負担とする。

第2本件記録上認められる事実

原告ら並びに訴外K及び同L(以下、この両名を「K外1名」という。)は、「水沢うどん」の文字を縦書きしてなり、指定商品を、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表の第32類「うどんめん、即席うどんめん」とする登録第2564665号商標(平成2年9月21日登録出願、平成5年8月31日設定登録、以下「本件商標」という。)に係る商標権の共有者である。

被告らは、平成9年10月27日、原告ら及びK外1名を被請求人として、本件商標につき登録無効の審判請求をし、同請求は、平成9年審判第18135号事件(以下「本件審判事件」という。)として特許庁に係属した。なお、原告ら及びK外1名は、本件審判事件につき、いずれも弁理士M及び同Nを審判代理人に選任した。

特許庁は、平成12年4月6日、本件審判事件につき、本件商標は、これをその指定商品に使用するときは、単に当該商品の品質、産地、販売地を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、その登録は商標法3条1項3号に違反してされたものであり、同法46条1項により無効とすべきであるとして、「登録第2564665号の登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。

第3原告らの主張及び当裁判所の判断

1  本件訴状には、原告らの主張として、本件審決に係る工業所有権に関する手続等の特例に関する法律10条所定のファイル記録事項記載書類(以下「本件審決写し」という。)は、平成12年4月26日に原告らに送達されたところ、本件商標の登録の効力に関する本件審決の上記の認定判断は誤りであるから、本件審決は違法として取り消されるべきである旨の記載がある。

2  ところで、共有に係る商標権について商標権者に対し商標登録の無効の審判を請求するときには、共有者の全員を被請求人として請求しなければならない(商標法56条1項において準用する特許法132条2項)が、そのような審判請求に対し、当該商標の登録を無効とする審決がされた場合に、共有者の提起する審決取消訴訟において、その審決を取り消すか否かは、共有者全員の有する一個の権利の成否を決めるものとして、共有者全員につき合一に確定する必要があるから、当該訴えは、共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解すべきである。

したがって、本件審決の取消しの訴えは、本件商標に係る商標権の共有者である原告ら及びK外1名が全員で提起すべきものであって、原告らのみの提起に係る本件訴えは、不適法であるといわなければならない。

そして、原告ら及びK外1名が、本件審判事件につき、いずれも弁理士M及び同Nを審判代理人に選任したことは前示のとおりであるから、原告らのみならずK外1名に対しても、原告ら主張の平成12年4月26日に本件審決写しの送達の効力が生じたものと認められるところ、同日から30日を経過するまでに、K外1名から本件審決の取消しを求める訴えが当庁に提起された事実がないことは当裁判所に顕著である。したがって、K外1名については、既に出訴期間(商標法63条2項において準用する特許法178条3項)が経過しているから、前示のとおり不適法である本件訴えは、その不備を補正する余地がなくなったものといわざるを得ない。

もっとも、本件記録によれば、本件商標に係る商標権につき、K外1名がその各持分を原告らに対して放棄する旨の平成12年4月30日付け持分放棄書が作成された上、この持分放棄を原因とするK外1名の持分の原告らへの移転の登録の申請が同年7月17日付けで特許庁長官に対してされたことがうかがわれるから、その登録がされることにより、当該持分放棄の効力が生じ(特許法98条1項1号)、K外1名の各持分が原告らに帰属して(民法255条)、その時点から本件商標に係る商標権の共有者は原告らのみとなる。しかしながら、このような事情があるからといって、本件審決に対する取消しの訴えの出訴期間内に、原告らが、本件商標に係る商標権の共有者の全員として、当該訴えの提起をしたのと同様の訴訟法上の効果が、遡って生ずることになると解すべき根拠はない。

3  よって、本件訴えは、不適法でその不備を補正することができないから、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法140条に則り、口頭弁論を経ないで、本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 篠原勝美 裁判官 石原直樹 裁判官 宮坂昌利)

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